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『今回は本当に集中して製作できました。このスタジオのおかげかなって思ってるんですよ』
僕が照れながら言ったその言葉に葛西さんが反応した。
『ほう…じゃ、合格ってことだな、雪』
葛西さんは言いながら少し後ろにいる女性に視線を向けた。
ゆき?
僕が名前を呼ばれた彼女に目を向けると、彼女は葛西さんの隣に立った。そして丁寧に頭を下げる。
『水森雪と申します』
顔を上げた彼女は凛とした声で名乗った。葛西さんに視線を移すと、葛西さんが彼女の肩に手を置く。
『もしかして、葛西さんの彼女ですか?』
『は?まさか!』
すっとんきょうな声を上げて葛西さんが否定する。
『今、新しいスタジオを作ってるだろ。だから、このスタジオに今までみたいに掛かり切りって訳にいかなくてね。だから、この雪にここを任せることにしたんだ』
さっきの声とはまるで違う声で葛西さんは言う。どうやら彼女は、この葛西さんからかなりの信頼を得ている人物らしい。
『ま、アツシくんの言葉次第では他の人間に任せてたかもしれないんだけどな』
え?どういうことだ?
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