第十七話 負の欠片

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「やぁ、茜。元気にしているかい?君に会えなくなってまだ二日しか経っていないけれど……随分と離れている様に感じるよ」 そう言って父は少し寂しそうに俯く。 「片瀬さん……もちろんあの映像は見て頂けましたよね?」 男のその言葉に父は顔を上げると、微かに嘲笑を浮かべて頷いて答える。 その父の答えに、愕然とした。 ……父は見たのだ。 あのおぞましい夜の記録を。 その事実に眩暈がし、それと共に酷い屈辱を覚える。 「ああ、見たよ。本当に心の底から、君を殺してやりたいと思った」 そう言って父はクスクスと笑うと、真っ直ぐに男を見つめた。 「それで颯太君……いや、今は隼人君だったか」 その父の言葉に、ドクンと心臓が大きく鼓動を打った。 ……颯太。 父は今確かにそう言った。 この男の事を……颯太と呼んだ。 驚愕の眼差しで男を見ると、その視線に気付いたのか男は少し窺う様に私を振り返り、そして小さく息を吐いた。
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