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第二十三話 妖しき闇
ボロボロの少女を連れて自分の部屋へと戻ると、彼女に私の為に用意されていた洋服を渡した。
「とりあえずこれを着て」
「……あ、ありがとうございます」
手渡した洋服を少女はギュッと抱きしめると、キョロキョロと窺う様に部屋の中を見回す。
「あ、あの……茜様はどうして私を助けて下さったのですか?この双月館を自由に歩ける様な御方が、どうして私なんかを……」
そう言って少女は困惑した様に瞳を揺らして私を見つめる。
「目の前で誰かが殺される為に連れて行かれるのを……黙って見過ごせなかっただけ」
そう言ってニッコリと笑みを向けると、少女は微かに唇を噛み締めて俯いた。
「本当にありがとうございます。なんてお礼を言ったらいいのか分かりませんが……本当にありがとうございます」
そう言って少女は私に向かって深々と頭を下げると、ポロポロと宝石の様な涙を零した。
傷だらけの小さな体をカタカタと震わせる悲しいその姿を見つめたまま、自分の置かれているこの《世界》がいかに歪んでいるのかを認識した。
「お礼はいらない。さ、早く着替えて。そのままじゃ風邪引いちゃうでしょ?」
そう言って笑い掛け彼女の肩にそっと手を触れると、少女はコクリと頷いてモソモソと着替えを始めた。
それから着替えを終えた彼女をソファーに座らせると、痛々しい傷の手当てをする。
幸いこの部屋には救急箱が置かれたままで、それを使って少女の手当てをしていった。
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