第二十五話 悲しき王

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第二十五話 悲しき王

長い廊下を進みながらそっと窓から外を見ると、そこはすでに薄暗い闇に包まれていた。 あの後私は部屋へと戻り、ルイとレイに言われるがまま身支度を整えさせられた。 シャワーを浴び、髪を乾かし、それからあれでも無いこれでも無いと様々なドレスを着せられ、それが落ち着いたかと思えば、化粧とヘアセット。 バタバタと忙しそうに準備を進める二人に夜光会とは何なのか尋ねてみたが、二人表情を曇らせたままその話題を上手く逸らして来た。 そんな事をしている内にあっという間に日は暮れ、そして今、榊原さんに貰った招待状を握り締めたまま……双子と私の三人で夜光会の会場へと向かっている。 リイサは階級が足りないとか何とかで、夜光会に入る事は許されないらしく、私の部屋で待機する事になっていた。 そのまま廊下を進んで行くと、その突き当りに黒い扉が姿を現す。 そこには受付らしきテーブルが置かれ、そこに立つスーツの男の視線が私に向けられた。 「……これを」 そう言って扉の前に立つ男にそっと白いチケットを渡すと、男は私に向かって深々と頭を下げ……そっと扉を押し開いた。 黒いドレスの裾を少し摘んだまま、そっと部屋の中へと足を踏み入れる。 そして見えた光景に思わずその足を止めた。 薄暗い照明の広い部屋の中に、沢山の人の姿が見える。 高級そうなスーツに身を包んだ身なりのいい男達に、美しいドレスを着た若い女の子達。 男達は黒いソファーに座りながら、近くの人達同士で何やら談笑をしている様だった。 そしてそんな彼等の先には、美しい女性達が華麗に踊っている姿が見える。 ソファーの前にはテーブルが置かれ、そこには美味しそうな料理に果物、それからお酒が並んでいた。 ……これが夜光会。 流れる音楽も、この部屋に漂う香りも、誰かの囁きも……全てが妖しく淫靡な雰囲気を纏っている事だけは理解出来た。 バタンという音と共に入口の扉が閉められると、その音に気付いた皆の視線が私に向けられる。
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