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「……今日は……お外……晴れ…てる?」
その私の問いに彼はそっと窓から外を眺めると、それから小さく頷いて答えた。
「はい、とってもいいお天気ですね」
彼はそう言ってニッコリと眩しい太陽の様な笑みを見せる。
「……あーあ……せっかく……いい…お天気……なら……お外で……遊び…たかった…な」
「いつでも遊べますよ。茜様の具合が良くなったら、一緒に外でお茶でもしましょう」
不甲斐ない体を恨めしく思った私の呟きに、彼はそう答えると優しく笑う。
「……クッキー…も?」
「はい。何なら僕がクッキーを焼きましょうか?」
「……一緒…に……作る」
「はい。じゃあ、約束ですね」
私の言葉に彼は短く答えると、そっと私に向かって小指を立てて見せる。
「……うん。……約束」
そう言って弱々しい笑みを浮かべて見せると、熱のせいで微かに震える小指を……そっと彼の小指と絡めた。
「はい、確かに約束しました」
そう言って彼は笑うと、そっと彼の腕に付いている腕時計を見つめる。
「それにしても母さん……遅いな。とっくに帰って来てもいい時間なのに……どこに行ったんだろ」
彼はそう小さく呟くと、それから微かに息を吐いた。
「茜様はもう少し寝ていた方がいい」
「……颯太…くんも……行っ…ちゃう…の?」
その私の縋る様な問いに、彼は目を丸くすると……それから優しく笑った。
「どこにも行きません。僕は茜様の傍に居ますよ」
そう言うと彼はギュッと私の手を握り締めてくれる。
「……行かないで。私をひとりにしないで」
「行きません。僕はずっと茜様の傍に居ます」
震える私の言葉に彼はもう一度同じ言葉を繰り返す。
「だから今は眠るといい。心配しなくていい。僕が傍に居ますから」
その彼の言葉に小さく頷くと……静かに目を閉じる。
息苦しさは未だ言え失せてはくれないが、繋いだ手の温もりは不思議と私を癒してくれる気がした。
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