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第三十九話 交わる心
私の手を握り締める誰かの手の温もりを感じながら……そっと目を開く。
微かにぼやける視界の中視線を動かすと、そこには思った通りの姿が見えた。
俯き微かに身体を震わせながら、強く、強く私の手を握り締める男。
彼は私が目を覚ました事に気付いていない様で、俯いたまま小さく唇を震わせている。
「……茜……あかね……」
彼の唇が小さく動く度に、そこから私を呼ぶ擦れた声が漏れる。
神に祈る様に両手で私の手を握り締めたまま、きつく瞳を閉じる彼の姿はまるで泣いている様に見え……その弱い姿にツキンと胸が痛んだ。
それと同時にズキズキと鈍い痛みが体中を廻る。
静かに首を動かし視線を落とすと、そこには包帯で巻かれた自分の腕が見えた。
どうやらベッドに寝ているらしい私には、白い薄手の毛布が掛けられている。
それに隠れた足からもズキズキと微かな痛みを感じる気がした。
しかしその痛みを無視して小さく息を吸うと……そっと彼の手を握り返す。
その瞬間、俯いていた彼の瞳が開かれ、そして彼は勢いよく私を振り向いた。
「……茜!!目が覚めたのか!?」
そう言って彼は少し興奮した様に強く私の手を握り、私の様子を窺っている。
「……死ねなかったのね」
そう小さく呟き自嘲気味に笑って見せると、彼は苦しそうに眉を顰め……俯いてしまった。
それから暫く……沈黙が続いた。
全てが白で統一された静かな部屋の中、重苦しい空気が辺りに広がって行く。
しかしその静寂を破ったのは……彼だった。
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