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用意された部屋へと入り、そこに置かれている大きな椅子に座る。
まるでどこかの城の王座の様なその椅子に腰かけたまま、気だるい息を吐いた。
それから暫くすると部屋の大きな赤い扉が開かれ、そこから二つの影が姿を現す。
まるで人形の様に整った顔をした双子の兄妹。
その二人は俺に向かって深々と頭を下げると、それからそっと顔を上げた。
「申し訳ございません。必死に引き止めはしたのですが、夢幻王にお会いしたいと聞かなくて」
そう言ってレイが困った様に笑う。
「でも私は……こうなる様な気がしていましたわ」
ルイはそう言って嬉しい様な悲しい様な複雑な顔をして笑った。
「お入り下さい。夢幻王がお待ちです」
レイのその呼び掛けと共に、二人の後ろから一人の女が姿を見せる。
その姿を窓から差し込む太陽の光が照らし出したその瞬間……言葉を失った。
「お目通り……誠にありがとうございます。……隼人様」
そう言って彼女は床に跪き深く頭を下げると、ニッコリと眩しい笑みを浮かべて見せた。
その姿を……俺は知っている。
……どんなに願っただろうか。
……どんなに祈っただろうか。
その決して叶う事の無い、望んではならないその《願い》が……今、目の前にある。
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