第一章四話

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 四限目になり授業は教室から化学の実験室となった。  移動している間も、彼女の周りは取り巻きが多い。  零自身も彼女と接触しようと試みていたが、なかなかタイミングが掴めないままだった。  だがここでチャンスが訪れる。 「へー、十羽乃さんって以前常盤市に住んでたんだ」 「う、うん……。でも、小さい頃に少し、しか住んでなかったから……」    零は眼前にいる彼女に話しかけながら、内心動揺していた。  まさかあの――大災害の被害者なのではないだろうか。  零と同年齢であり、彼女が小さい頃常磐に住んでいたならばその可能性もある。  実験は四人で一組の班に分かれて行う。  出席番号順なのが幸いした。  場合によっては先生の心に干渉して意図的にグループを組むことも考えていたが、それは余り実行したくなかった。 「でも何でまた戻ってきたの?」 「え……? そ、その、パパの仕事の、都合で……」 「嘘だね」と零は断言した。  彼女の肩がビクッと震えるの見て零は、しまった、と思った。 「あ、いや、違うんだ。君が答えたとき伏し目だったから別の理由があるのかと思って……。その、ごめん」  姫希は俯いた。    気まずい雰囲気が漂う中、零はライターでアルコールランプの芯に着火させる。  次の瞬間――    試験管が破裂した。    零たちの班の試験管の破裂を皮切りに、他の班の試験管も次々と割れていく。 「うわ、なんだッ!?」 「きゃっ!!」  クラスメイトが全員騒然となる。  零は愕然とした。余りにも突発な魔法の暴発に、思考が停止しかける。 (こ、こんな事ってあるのか……? 魔法の発動の兆しすらないなんて……)  姫希の方を振り向くと、彼女は床に座って顔面を蒼白にしていた。  ガタガタと身体が震えていて、唇がわなないている。  自分の体が崩れ落ちないようにと、両腕で自分を抱いている。  零は彼女に近付き「大丈夫?」と声をかける。  彼女はビクッと大きく身体を震わせると、幽霊を見るような眼差しを零に向け、 「ご……めん……な……さい」    と言って気絶した。
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