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レプリカ――複写、模造といった意味で四元素を全て操れる存在だ。
一つ一つの魔法の力は劣化しているが、四元素全てを唱えられる魔法使いは滅多にいない。
零が知っている限り、四式と〝伝説の魔法使い〟を除いて……。
「だけど彼女は自分で魔法を認識しているように見えませんでしたが……」
魔法を使える事に気付いているのと、認識は別だ。
存在を正しく認識しなければ、それは奇異に繋がる。
「それはそうだ。彼女は魔法の存在など知らない。ただ自分に奇妙な力がある、程度の認識だろう」
「それは……非情に危ない状態ですね。彼女は自分を怖がっている。発動現象すら無い魔法の暴発ほど恐ろしいものはないですよ」
零もレプリカの詳しい情報までは知らない。
だが、魔法暴走の恐怖は知り尽くしている。
あの大火災さえ、魔法の暴走が原因だったのだ。
「それは私も危惧している。だから君に先程言ったように十羽乃姫希の保護を頼みたいのだ。いや、保護と言うより護衛かな?」
「護衛? 彼女が誰かから狙われてるとでも?」
「〝誰か〟というより〝組織〟だな。彼女はあの『暁の風』に目をつけられてる」
「……どういう事です?」零は剣が含んだ返事をした。
『暁の風』
妹の一華をさらった過去を持つ魔法使いの無法集団。
規模、組織図、目的など詳細は不明だが、魔法使いの素養がある子供をさらい犯罪に荷担させているという話だ。
以前一華が誘拐された際に、小規模なアジトは零が潰したはずなのだが……。
「これは独自の情報だが、奴らは彼女を利用してあの〝大火災〟を引き起こそうとしている」
「――!?」
零の脳裏に煉獄の記憶がよぎる。あの地獄の光景を、彼らが再現しようとしている……?
「君も勘づいているだろう? 彼女は、君よりも魔力の量が多い。連中の目的が何なのかは不明だが、大火災を再現させるわけにはいかない。……そういう意味だ、零」
「……分かりました。彼女の護衛を引き受けます」
零は暗澹とした気持ちで拳を握りしめる。
あの〝大火災〟だけは絶対に招かない。招くわけにはいかない。
零は彼女を護る決意を自分に課した。
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