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「……でも、そのキミの優しさを狙ってる連中がいる」
「え……?」
「『暁の風』と呼ばれる魔法犯罪者たちだ。奴らが君の膨大な魔力を狙ってるっていう情報が入った。だから僕は、これから君を護衛しなければならない」
彼は真剣に言った。嘘をついているようには見えない。
姫希は彼の言葉を反芻した。
(狙われてる? 私が……?)
そこで姫希の思案を断ち切るように、唐突にチャイムが鳴る。
「よし。詳しい話は家でしよう」
そういうと彼は立ち上がる。
「あ、その……」
「大丈夫。僕の妹の料理は絶品だから。味は保証するよ」
手早く帰る準備を整え、まだ混乱状態の姫希の手を取った。流されるままに姫希も彼に続く。
同年代の男の子と手を繋ぐのは初めてで心臓が凄い音をたてたが、姫希には彼にどうしても聞いておかなければならないことがあった。
「あ、あの、お名前……」
彼は姫希に言われて、「ああっ」と自分が名前を名乗っていないことに気付いた。
「僕は御堂零。あらためてよろしく、十羽乃姫希さん」
御堂零はニッと笑った。
彼と手を繋ぎながら帰っていると、校門で一人の女生徒が声をかけてきた。
「もう、兄さん遅いッ! 私、待ちくたびれ――」
彼の妹と思われる相手が息を呑む。
何かに驚いて、目を丸くしているようだ。
そして曰く言い難い顔で、御堂零にゾッとするような微笑みを向けていた。
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