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「あ、あのー、一華。これは……?」
「何、兄さん?」
「僕の夕食は……?」
「兄さんのご飯は目の前においてあるでしょう? それとも兄さんは私が作ったご飯に不満でもあるの?」
「え? だ、だって一華たちは……」
「私と姫希さんのご飯は別です」
彼女達の前には、色彩ゆたかなサラダにベビーハンバーグ、コーンポタージュにバターロールがある。おまけにデザートと思われる杏仁豆腐まで。
それに対して零は……。
「兄さん、バナナ好きでしょう? それを電子レンジでチンしておきました」
ニッコリと微笑む一華に、零は反論するのを止める。
心なしか、彼女の背後から陽炎のようなものが浮かび上がっている。
静かな怒りの気配を感じた。
零はおずおずと妹に尋ねる。
「一華、もしかして怒ってる……?」
「いいえー、別に。怒ってません。これっぽちも怒ってません。校門で待っていたのも、待っていたら兄さんが、見知らぬ女の人と手を繋いでいたことも、料理を手伝ってくれないことも、全ッッ然ッ怒ってませんッ」
それが原因か…………。
「て、手伝いは一華が追っ払ったんだろう? 『兄さんは邪魔だから引っ込んでてください』って」
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