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「死者に対する貴様の態度には病的なものがある。死者は死者だ。
決して生き返ったりはしない。
貴様が何を思って毎日祈りを捧げているかは知らないが、そんな事では近いうちに貴様も死者の仲間入りするぞ」
「……先生には関係ないことでしょう? 僕には僕の考えがあります」
「ふん、そうだったな。貴様はとっくのとうに死者の仲間入りを果たしていた事を忘れていたよ」
ぞんざいな言い分だが、あながち外れてはいない。
御堂零は一度死んだ。十年前のあの大火災で死んだも同然なのだ。
いまもこうしてのうのうと生きているのは理由がある。
零が無言でいると四式は「ふん」と鼻をならす。
「まあいい。放課後、理事長の元を訪ねろ。今朝貴様が出逢った少女の件で話があるそうだ」
「少女?」
「とぼけるな。貴様が朝、接触した少女のことだ」
四式が零の頬についている一筋の傷痕を指差す。
……やはり把握されているのか。
「彼女は少し〝特別〟でな。理事長も彼女の扱いに慎重を要している」
「……先生は、彼女のこと……」
「私も詳しく知らされていない。が、慎重にかつ厳重に扱うように、とのことだ。その理由は貴様が一番知っているんじゃないか?」
学園にいる魔法使いの子供たちを束ねる司令塔が何も知らされていないとは珍しい話だ。
だがそれだけデリケートな問題だとも言える。
何せこの自分よりも魔力量があるのだ。
彼女が自身の膨大な魔力の扱い方を誤れば悲惨な事態を招きかねない。
――理事長はそれを危惧しているのか?
あの瞳の奥底に潜む眼光を思い出す。
理事長は自身の目的のためにはどんな手段も、適当と断じれば必ず実行する。
例えそれが相手を死に至らしめるとしても、だ。
零は背筋が冷えた。
少しでもいい。彼女の情報が欲しい。
彼が暴挙に出る前に、手立てをこうじたい。
瞳で四式にそう訴えると、彼女は顎をしゃくった。
そこには今朝出会った少女が、行き場のない迷子のような顔をして、零のクラスの入り口前にいた。
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