第一章四話

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第一章四話

 二限目が始まった直後、四式が『突然だが転入生を紹介する』と言った。  降って湧いたイベントにクラスメイトは静かな喧噪に包まれる。  惰性と倦怠で澱んでいた空気に、新たな風が舞い込むようだった。  四式に呼ばれてクラスに入ってきた少女は、間違いなく零が朝出会った少女だった。 「と、とわっ、十羽乃、姫希、です……。よ、よろしく、お願いしますっ」    黒板の前に立つ少女はたどたどしく自己紹介をすると、クラスの好奇の視線を避けるように俯いた。  そのおどおどとした態度は、子犬のような印象も与えたし、子猫のようでもあった。 「十羽乃は両親の仕事の都合で急遽こちらに編入する事になった。見慣れない土地や学校だ。彼女が慣れるまで、みんな協力してやってくれ」    四式の発言に、クラスのみんなは頷く。  大半は男子だったが、それも仕方ない。  かわいい女の子に男子は浮き立つものだ。  零はクラスの女子の反応を見て、安堵した。  女は表面的な仲間意識が強く、害を為す人間を嫌う。  自分たちに危害を加える性格ではないと、彼女たちは判断したようだ。その逆がなければよいのだが……。  二限目の授業が終わった直後、彼女は質問攻めにあった。  男子女子混成の壁が姫希の周囲に出来上がる。 「十羽乃さんっていま何処に住んでるの? 前は?」「部活とかって入るの?」「彼氏は?」「髪、綺麗だよね。どこのメーカーのシャンプー使ってる?」    次々と浴びせられる質問の洪水に、彼女は始終おたおたとしていた。 「え、あの……」と一人の質問を答えようとすると別の奴から質問を投げかけられる。    彼女の性格もあるが、あれでは答えようがない。 「あれ? 御堂、お前彼女の所にいかねえの?」クラスメイトの一人が話しかけてくる。 「僕はいいよ。あの人だかりに混じる勇気、僕にはない」    零がそう答えると、クラスメイトは「ふーん、まいいや」と言って、彼女の元に行った。  零は観察を続ける。彼女の一挙手一投足を、余すことなく。  彼女の魔法がいつ暴発してもいいように、休み時間を警戒し続けた。
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