第6章

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電話をかける前に、もう少し考えればよかった。 これじゃあ、鈴木さんが盗ったと疑ってるみたいになってしまう。 『…うわぁ、まさか疑われてる?』 「ま、まさか。 失礼なことを聞いて、すみません。 引っ掛かって、千切れたのかと思いまして…。」 『って、よくわかったね?』 その言葉に、一瞬でも申し訳ないと思った自分が情けなくなる。 「…は?」 『持ってるよ!』 「え!?」 『いつ会える?』 本当に引っ掛かったのか、後から気づいたのか、わざとなのか…。 予想がつかない。 それでも、ネックレスが見つかったことに安堵する。 「…受け取りなら、いつでも時間合わせます。」 『ちょっと冷たい?』 「つ、冷たくないです。」 『今日はちょっと時間取れないんだけど、明日の仕事の後でもいいかな?』 「わかりました。」 『たぶん、8時頃になると思うけど、終わったら連絡してもいい?』 「はい、お願いします。」 『それじゃあ、明日。』 「わかりました。」 通話を終える。 ふう、とため息を吐き出して、咲田さんの視線に気づく。 「明日会います。」 「大丈夫?」 曖昧な笑みを返す。 鈴木さんがなにを考えているのか、予想もつかない。 信用性には大きく欠けている。 でも、言動の全てが非常識ではないし、無理強いをしたりもしない。 出会い方がもし違っていたら、いい人だと思ったかもしれない。 だからって、信頼は出来ないけれど。 「でも、憂うつです。」 「そうだね。」 ~♪ ケータイが鳴っている。 手に持っていた仕事用のケータイのディスプレイを見るけれど、なにも表示されていない。 「あ!」 慌てて自分のケータイを取り出す。 「もしもし?」 『もしもし?ふー姉?』 「カイト。なぁに?」 『仕事は?』 「終わったよ。」 『ご飯は?』 「まだだよ。」 『じゃあ、一緒に食べようよ!』
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