第12章

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「そうだったんですか?」 「えええ!? あの、私、重ね重ね失礼なことを…。 ごめんなさい!」 ソファから滑り落ちて、土下座でもし始めるんじゃないかって、勢いで謝られている。 「大丈夫ですよ、顔を上げてください!」 「あげられません! もう申し訳なくて、恥ずかしくて…。」 確かに気分のいい話をされたわけでもないし、昔を知らない人にまで、昔の話をされていることも知ってしまった。 今だに、面白くないと思っている人もいるみたい。 それも少し怖いと感じた。 だけどそれとこれとは別の話で、有村さんはちょっと正直すぎるけど、そんな風に思ってしまうのも、仕方ないかもしれないと思う部分もある。 だから、腹をたてているわけじゃないし、有村さんを怒ってもいない。 「そう思うように話をされたのだから、そう思っても仕方ないですよ! でも、そうじゃないと思ってくれたなら、それでいいです。」 私の説明は、回りくどくてわかりにくいらしい。 だけど伝わってくれたのか、有村さんはゆっくり顔をあげた。 「思いません! でも本当に申し訳ありません。 …中田さんにも、余計なことを言ってしまって…。」 「あはは、中田もきっと気にしてないので、大丈夫ですよ。」 「そうでしょうか…。 でも中田さんは山田さんを、すごく信頼なさっているんだなって思いました。」 「そうだといいけど?」 「絶対そうですよ!」 「ふふふ。 有村さん、中田のことが気になっているんですか?」 「えええ!? もちろん、仕事では勉強させていただくことばかりで、とても尊敬してますが…。」 まさに、焦りまくりの状態で、顔も赤い。 意地悪しすぎてしまった。 「そうなんですね。」 「は、はい!」 カタンと事務所のドアが開いた。 「ただいま。」 「咲田さん、おかえりなさい。」 「はい、おみやげ。」
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