第12章

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差し出された袋を覗くと、クッキーが入っていた。 「よかったら、二人で食べて?」 「ありがとうございます。」 「コーヒーいれたげよっか?」 「はい!」 咲田さんは、にこにこしながら給湯室へ向かった。 「有村さんは、コーヒーはお好きですか?」 「はい。 …あ…実は…。」 少し目を伏せて、 「苦いので、あまり得意じゃないんです。 …あの、もしかして山田さんは、コーヒー好きですか?」 「好きです。 …でも、どうして?」 有村さんは、納得がいったと言わんばかりの表情で、嬉しそうに笑った。 「中田さんが、差し入れをくださる時は、いつもブラックコーヒーなんです。 でも中田さんは、甘いのも飲んでいるので、自分が好きだからってわけでもないのかなぁ…って、不思議だったんです。」 「…え…っと?」 「山田さんがコーヒー好きだからなんですね。」 そこでどう繋がるのか、イマイチわからないけれど、咲田さんは笑いながらコーヒーと共に給湯室から出てきた。 「中田は、山田さんのことばっかりだからね。 甘いのにしてって、言った方がいいよ?」 「そ、そんなことは、言えません!」 「私、言っておくよ! ほんと、気が利かないんだから。」 咲田さんは、私たちの前にコーヒーを置いてくれた。 「ありがとうございます。」 「いただきます。」 「コーヒーのお砂糖ありましたよね?」 「はい、どうぞ。」 咲田さんはお盆に乗った、小さな器を差し出した。 茶色のお砂糖が入っている。 「ありがとうございます。 有村さん、よかったら使って下さい。」 「ありがとうございます。」 ニコリと微笑む姿もキレイだなぁ。 クッキーも、分けて食べる。 甘すぎなくて、食べやすい。 「おいしいです!」 「良かった。」 こんなにのんびりしていいのだろうか、と思った頃に中田が戻ってきた。
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