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嫌いになるってわかってることは、したくないなぁ。
カップを洗い終えて、机に戻る。
「咲田さん、今日は鍋にしませんか?」
「いいけど、中田は遅いかもよ?」
「中田とカイトには、なにか別のものを用意するので、二人で鍋しましょう?」
「ん、いいよ。」
「前に思ったんですが、居間にこたつ置いたら楽しそうですよね。」
「こたつかぁ。
…みんな居座るんじゃない?」
「やっぱりそう思います?」
「うん。」
顔を見合わせて、笑う。
「中田にも話してみましょうか?」
「すぐ買って来そうだから、ダメ。」
「あははは、そうかもですね!」
ファイルや伝票をまとめて、帰る支度をする。
「病み上がりなんですから、早く仕事終わらせて下さいね?」
「ん。
でももうちょっと片付けたいから、先に帰ってて?
そんなに遅くならないから。」
「わかりました。」
ひとりで先に事務所を出た。
鍋の材料をなにか探しに、スーパーに向かう。
途中で、こちらに歩いてくるスーツ姿の人が見えた。
近づくほどに、心臓がドキリとする。
「お久しぶりです。
山田さん。」
笑っているのに、背筋がゾクリとするのは何故だろう。
「…鈴木さん。」
つい身構えてしまう。
「中田さんは、事務所にいらっしゃいますか?」
「いえ、外出してます。」
少しでも冷静になろうと、心を落ち着ける。
「残念だな…。
あ、原田さんは元気ですよ。」
「そうですか。」
「辞めた人は、気にならないって感じですか?」
悔しくて、カッとなる。
「そんなことありません。」
「山田さんも、うちに来ませんか?
歓迎しますよ?」
「遠慮させてもらいます。」
あなたは最低だと、怒りをぶつけられたら、どんなにスッキリするだろう。
…だけど、鈴木さんの会社とも仕事の繋がりはある。
それに、スッキリ…しないかもしれない。
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