第12章

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怒りをぶつけても、全てが相手に伝わるわけじゃない。 鈴木さんは、鈴木さんの思いを私にぶつけているけれど、私もそれを受けとる気持ちはない。 話し合いが無意味だなんて、そんなことは思わないけれど、わかり合う為にはわかり合いたいと思う気持ちが必要だ。 冷静になる為に、必死に色々なことを考える。 「残念だなぁ。 山田さんが来てくれると、すごく楽しいと思うんだけどな。」 「そうでしょうか。」 鈴木さんはニコニコしているのに、怖いと思ってしまう。 「山田さんに、来て欲しいなぁ。」 「申し訳ないのですが、それはできません。」 「そっか。 でも、来たくなったらいつでも連絡して下さいね?」 「わかりました。 連絡することは、ないと思いますが…。」 「今のところは…。 良かったら、今度お食事でも。」 「すみません。 それはちょっと…。」 「あ、咲田さんって、束縛するんですか?」 「答える必要ないですよね?」 「独占欲が強くて、嫉妬深くて、大変ですね。」 「あの、用事があるので、失礼します。」 終わらない会話を、無理矢理中断させる。 頭を下げて、隣をすり抜ける。 「今度連絡しますね!」 後ろから声が聞こえたけれど、早足で逃げるように、少しでも遠くへ…。 走ると負けたような気になるから、必死に足を動かす。 「あれ?フウコ?」 角を曲がったところで、中田に出くわした。 不安な気持ちで、心が押しつぶされそうで、中田を見たらホッとした。 …ホッとして、ちょっと変になっていたのかもしれない。 「中田…。」 ゆっくり近づいて、中田の胸に頭を近づけた。 「どうした?」 優しい声が、耳に響く。 「怖かったぁ。」 そっと頭を腕で抱かれて、ハッとする。 「ご!ごめん! 私、なんてことを!」 慌ててバッと身体を離して、視界に入ったのは驚いている有村さんの姿だった。
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