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そして、車内アナウンスが流れる。
『大変申し訳ございません。システムトラブルで野台駅の停止シグナルが飛んでしまい、停止が出来ませんでした。大変ご迷惑をおかけしますが、次の川(せん)ノ崎(ざき)でお乗換えください。大変ご迷惑をおかけします』
車内アナウンスを聞くと周りの人達は「なんだよ」「うわ、めんどくさ」「まだ、仕事があるのに」などと言ってる。
まぁ、しっかりと止まるならそれでいいかと思う彰吾。
だが、違和感を感じた俊は気づく。
「……、なぁ彰吾」
「なんだ?」
「通常運行ってか、これドンドン加速してないか?」
「は?」
彰吾は扉の窓を見ると、周りの景色が物凄い速度で過ぎ去る。
おかしい、確かにおかしかった。そう思っていると、隣から現れた電車より早い。
各停ならばそろそろ川ノ崎の為減速するはず。
しかし、この電車は減速する様子が見えず、加速している。
「おかしいな……」
「だろ……」
彰吾と俊が顔を合わせ確認する。
そしてもう一度隣の電車を見た瞬間、戦慄と確信した。
「う、うそだろ……」
俊が言う。無理もない、隣で走っているのは、
「快特……、野台から終点まで止まらない電車より速い……」
隣で走っていたのは快特だった。7駅素通りする電車より速く走っているこの電車。
もうすぐで隣の快特を抜かそうとしている。それに気づいた車内の人。
「おい、あれ……快特じゃないか? なんで各停が快特より早く走ってんだ?」
男性の発言に、車内にいる人達が窓を見る。
「おかしくない? これ……」
「ちょっと車掌さん呼べよ!」
事態を把握した人達が騒ぎ出す。騒ぎ出していると、俊が思い出す。
「やべぇぞ……、彰吾……」
「何が?」
「この先――」
「なに!?」
周りがうるさく、俊の言葉が聞き取れない。
俊が黙り込み、もう一度言う。
「この先、線路が一緒になる!」
基本各停は各駅に止まる為、急行など駅を素通りする電車を優先で走らせ、レールを調整する。
上り、下りの線路で二種類のホームが絶対にある。
それが全部で四つあるところもある。
しかし、次の駅川ノ崎は駅のホーム一つしかない為、急行などが先に行かねばならないのだが、この電車は加速をしっぱなしで減速していない。
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