第1章

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食べるよ? おまわりさんのこと。 今は配達とかしてるけど、元ホストなんだってば。けっこうな肉食系男子なんだって。 「どう? クリスマス」 「あの、どうして、僕を?」 そんなの決まってるでしょ。 「ほら、これ、俺の免許」 「……」 「一時停止切符、攻防戦、まだしたいんだ」 「あっ!」 やっぱり忘れてた。 しまったと、肩だけで飛び上がって、慌てて、自転車の中に入っている書類を取ろうとしている。 でも、そんな足で歩けるわけもなくて、すぐにその場に座り込んでしまう。 「だから、待っててよ」 「うぅ~」 「配達終わらせたら、ほら、また続きしようぜ」 「つ、続きって」 「クリスマスデートの相手もいない者同士、面白そうじゃん」 嘘だけど。 ニコッと笑ったら、やっぱり茹でダコみたいに真っ赤になって、言葉すら失っている。 これ、元ホストの営業スマイルとは少し違うからね。 マジで、本気の笑顔だから。 「ね? おまわりさん」 ちなみにこれで落ちなかった女はいないからね。 どうしようかな。 一時停止の切符くらい、もう全然かまわなくて、そんなんいくらでも切ってくださいって感じなんだけどさ。 でもきっと超真面目なおまわりさんはいまだに、本気でそれを注意しようとしてるだろ? だから、交換条件、どうしょうかなぁって。 キスかな あー……でも焦らしプレイして涙ぐませたら、最高にツボだろうなぁ。 「な、なんで笑ってるんです?」 「んん?」 そんなの言えないでしょ。 それこそ、俺、逮捕されちゃうじゃん。 おまわりさんを配達用の車に乗せて チラッと後ろを振り返ったら、あのおっさんはまだこっちを眺めていて なんでか、ガッツポーズして、両手でバンザイしてくれてた。
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