第1章

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年末になるとどうしてこう、みんな、運転が荒くなんだよ。 って、さして交通ルールも守らなかった元クソガキの俺が言うのもなんだけど。 「マジ、間に合わねぇ」 そんでもって、なんで、このでかい道でギッチギチに車が渋滞している中 交差点でもない、道のど真ん中で、右折しようとすんだよ。 マジで意味がわかんねぇ。 普通に考えろよ。 空気読め。 つうか、邪魔。 だから、年末の配達って嫌いなんだよ。 この配達が終わったら、今日は盛大にパーティーなんだっつうの。 女の子入り乱れて、クリスマスイヴを楽しく過ごそうっていう。 そう、今日は、クリスマスイヴだ。 水曜なんて関係ない。 で、今夜はそのままお持ち帰りとか? 「チッ」 チラッと時計を見る。 見たところで、納入先の店までの時間がギリギリってことに変わりはない。 何度見たって、時間が短縮されるわけもない。逆にどんどんとタイムリミットが迫ってくるのがわかって、どうしようもないのに焦るだけだ。 あと、少しなのに あともうふたつ信号を超えて、そこから抜け道使えばまだ、平気。 夕方のこの時間、真っ暗だから、あんまり抜け道を使いたくないけど そんな余裕もない。 イライラしながら、ちびりちびりと進みつつ、何度か信号が青、黄色、赤、青、黄色、赤と変わっていくのを見送って、ようやく次の信号で、抜け道に入れる。 何台かが同じ、細道へと吸い込まれるように入っていく。 この道は生活道路だから、通り抜けはご遠慮ください、なんて書いてあったって、これだけ道が麻痺してたら、みんな、ガン無視だ。 「あ?」 知らないおっさんが、真っ暗闇の中、こっちに向かって手を振っている。 なんだ、あれ。 そんな感じに眺めると 車の中と、向こうと、目がばっちり合った。 そして、なんでか先を指差している。 はい? そう思った時だった。 けたたましい笛の音がして、少し懐かしい。 そして、それがすぐに警察だってわかった。
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