第1章

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それこそ、クソガキだった頃はよく追い掛け回されていた。 笛の音も懐かしいけど ダントツで白バイの鳴らすサイレンのほうが多かった。 「はい、ちょっといいですか?」 捕まえた瞬間の、向こうの切り出し方はだいたい一緒。 そう言えってマニュアルでもあんのかと思うくらいに、みんな同じ声のトーンで 同じ感じに偉そうに 「あ?」 「あ、あの、ここ、は、一時停止の」 偉そう、どころかビクついている「おまわりさん」がそこにいた。 停められて、切符を切られる時っていうのは、大概、有無を言わせませんって態度をしてくる。 まぁ、交通ルールを無視してる運転手が悪いんだけど あの憮然とした態度が異様にムカつく。 そんでもって、「あっちの車はどうなんだよ」「この前、信号ガン無視してたドライバーがいたけど、それはいいのかよ」と子どもがダダを捏ねるみたいなことをしたくなる。 なんでか、一言、文句を言いたくなる。 年末になるとよくテレビでそんな取り締まる警察の番組がやっていて それを部屋で眺める分には アハハ、どんなに拒否ったって、切符は切られるんだから、大人しく、はい、そうですかってするしかねぇだろ。時間の無駄。 なんて、笑っていられるけど やっぱり、グイグイこられると拒否したくなるのは、俺が天邪鬼なんだろうか。 「一時停止?」 なるほど、ここで取り締まりをしてるから、止まれって、あのおっさんは言いたかったのか。 車の中から後ろを振り返ったら、おっさんが「あ~あ」と残念そうに肩をすくめて、首を横に振っていた。 「にっ! 逃げる気ですか?」 「はぁ」 「ちょっ、ちょっ、道の端に寄ってください」 はい、それじゃ、道の端に寄って、そんな感じで言われることは多いけど、なんだ、このおまわりさん。 言われたとおりに道の端に車を寄せて、そして、ちょっと意地悪をした。 さっきまでは開けて話をしていた窓を閉めっぱなしにして、車の中に篭城する。 (ちょっ! ちょっと! ドライバーさんっ!) 面白れぇ、慌てて、窓をコンコンと遠慮がちにノックして慌てている。 ガラス越しにそれをチラッとだけ見たら、ガラスに張り付くようにして、こっちを恨めしそうに見つめていた。 マジで、こいつ、警察官か?
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