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顔を上げた私は含み笑いをしながら目の前の女を見上げた。
身動ぎする女の不敏さには同情する。
「…礼二が何?
私は別にあいつの事好きじゃないし」
「っはあ!?」
「私が今付き合ってるのは真守
そりゃもうラブラブなわけ
告白も出来ないあんた達にあれこれ言われる筋合いはない」
張り詰める空気に身を縮める女達は、納得のいかない顔で騒ぎ立てた。
それでも私には何も響かない。
その中で一つの声が聞こえた。
「末井君にも手を出してた癖に!!」
笑みが消えた。
途端に襲う恐怖。
地から這い出た黒い手が、私の体を縛り硬直させた。
女達は続けざまに言う。
「勝馬先輩もでしょ!?」
「結城君も!!」
「早坂君だって!!!」
乱れる呼吸は耳元から聞こえ、ぐにゃりと歪む世界。
周りを囲む女達の原型は無くなり、笑う唇が宙を浮きながら私に言う。
―――全部あんたのせい。
―――罪を償って死ね。
―――消えろ。消えろ消えろ。
―――お前が殺したんだ。
「…っ、あは…あははははっ」
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