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女達を残し、校舎へと入った私は真っ先に備品室へと向かった。
戸を明ける前に涙を拭いながら、一呼吸置く。
開いた扉の先には畳の上に腰を据える真守が居た。
「…待っててくれたの?」
一瞬は驚きの感情もあったが、彼の姿を前にして私は笑みを溢す。
すると私を見遣った真守の携帯からある音が聞こえてきた。
『え?他の男?
別に誰も本気で好きじゃなかったし』
この声は、私。
何も言わずに私を見上げていた真守の携帯の画面がこちらに向き、そこには先程の私の姿が写る。
仕返しだとでも言うのだろうか。
彼に近付こうとしていた足が反射的に止まった。
真守は言う。
「お前と付き合ってた奴にこの動画を流せば、どうなるだろうな」
本当に仕返しのつもりなのか。
湿った部屋から漂う異臭。
窓に弾ける大粒の雨粒が異音を奏でる。
私の心の中は、無だった。
「…流したいなら流せば良いよ
私は真守が傍に居てくれるならそれだけで良いの
でももし私と付き合ってくれないなら、私も動画を流すよ」
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