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人が人を愛したとき。
その先にあるものは何だろう。
運命なんて言葉は信じない。
ずっと一緒の言葉は存在しないのだから。
明かりのない部屋に蹲る私、佐伯 弥生は毛布を体に巻き付けて窓の外を眺めていた。
足元に光る携帯の画面には友人達からの心配の声が映しだされている。
それは上辺だけのものだろう。
誰も私を必要とはしない。
分かってるよ。
地味でネグラな私なんかこの世の汚物なんでしょ。
ふと携帯の時刻に目を遣った私は、今頃皆は化学の授業を受けているのだろうか、なんてどうでも良い言葉を頭の中で呟いた。
その時、画面にある人物からの着信が入った。
私は息を飲んで携帯を手に掴む。
「…もしもし」
「…弥生?
俺だけど」
聞き慣れた愛しい人の声に、止まったはずの涙が再び溢れ出した。
なんてこの世は残酷なんだろう。
私はただ、彼が好きなだけなのに。
受話器の向こうから彼は言った。
「ついさっき、あの女と話をした
…ごめん、俺のせいで」
君は何も悪くないの。
私に戦う勇気が無いから…だから君を失う事になった。
「…もう、連絡しないで
奈津美ちゃんにバレたら…」
「言ったろ?
俺はお前が好きだから
…形としてはあの女と付き合うけど、弥生と別れるつもりはない」
ああ。神様。
私はどうすれば良いの…。
どうすれば、この世界で私は幸せになれるのでしょうか。
__答えはない。
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