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秋の終りが近付く季節。
赤や黄色に色付いた落ち葉を足裏で踏むと、カシャッと心地好い音が聞こえた。
私、駒栄 奈津美は11時の空いた通学路を歩いていた。
にわかに降り注ぐ雨は悲壮感の様なイメージを手繰らせるが、それは今の私の気持ちと比例していた。
目の前に現れた木造の古い学校。
なんて憂鬱だろう。
誰もが皆、学業に励めとは言うけれど、それは一体何の得になるのか。
会話が出来れば十分。
それだけで良いじゃないか。
傘を翳して短いスカートを風に踊らされながら、私は校舎の中へと踏み込む。
年季の入った下駄箱からは汗の臭いやそれをまぎらわす香水の臭いが交差し、異臭を漂わせている。
鼻を摘まみながら自分の下駄箱を開けると、靴の上には紙が一枚置かれていた。
その相手が誰からなのか分かり切っている私は内容に目を通さず、くしゃくしゃに丸めてゴミ箱に投げ捨てる。
靴を履いて廊下を歩くと、授業中のおかげで辺りは静まり返っていた。
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