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スタッフルームのテーブルで向かい合う。
部屋の安っぽいオフィスチェアは社長には似合わない。
社長って言うのはやっぱり、真っ黒な革張りの重厚な椅子がお似合いだ。
私の向かいに社長がゆったりと座るのを見て、私はのん気にそんなことを思っていた。
社長が完全に腰を据えると、秘書が私に座るように促した。
私は小さく会釈した後、静かに椅子を引いて腰を降ろした。
期間満了を待たずにクビになったのだろうか。
けれど、そんなことは社長直々(ジキジキ)に話すことではない。
派遣会社では電話一本の連絡だ。
じゃあ……
何?
不安が胸の中にじわじわと染みてくる。
ヘビとカエルの構図になりながら
目の前の社長は私の不安をよそに、
穏やかな表情で私を見つめた。
「横浜で暮らす気はないかね?」
社長はゆっくりと口を開いた。
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