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空は、明るい。
今日も紅葉の美しい木の下に、いつもの男子生徒が現れた。
木の下の男子生徒は、自分の上に人がいることも知らずにのんびりと佇んでいる。
木の上、幹から分かれた今にも折れそうな枝の先に、一人の女。
天然であろう金色の髪に、漆黒の瞳。息を疑う美しさ。
真っ黒なピッタリとしたタイツとインナーの様なものの上に、現代では滅多に着るものはいないであろう紫の着物をみにまとっていた。
西洋と東洋の美しさを合わせたような女は、ただただ無表情で冷たい目をし、自分の真下の男子生徒を見つめていた。
どこにでもいる少年の様にしか見えないが、不思議なのはその「声」だ。
「神木 仁……」
女は小さく小さく呟いた。今にも落ちそうな赤い葉も、枝も、微塵も動かない。
自分を大木かなにかと勘違いしているのか。動かない。
チャイムが鳴り、男子生徒は慌てて校舎の中に走っていく。
毎日、同じ繰り返しの男子生徒。
女は、細い枝にわずかに力をかけ、そこから飛び降りた。
スタン、と足から音もなく着地し、膝を曲げてバネの様に更に高く跳ぶ。
それは、この赤い大きな木も、校舎も軽く越えてしまう高さだった。
僅かな風を利用し体を僅かに捻り、方向転換をする。
次に着地したのは、校舎の屋上だった。
また音も無く着地した女は、帯と身体の隙間から紙を取り出し、それに息を吹きかけた。
すると、ムクムクと動き出す紙。
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