第一章

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時間が過ぎるのは中々時間がかかるもので、つまらないと思っていればなおさらだ。 来ても欲しくない放課後が来てしまった。 帰ろうとして、鞄の荷物を整理している時に手に当たった紙を見て、思わずため息をついた。 「まーた果たし状か?仁」 その紙をヒョイっと俺の手から奪い、軽い調子でそう言うのは、俺の幼なじみ。 「……ハナ」 「その呼び方、辞めろってば」 花宮 純。 女みたいな顔で、背も低いからみんなそう呼ぶ。 辞めろって、っていつも照れた顔をするからなおさらだ。 大きな目が特徴的な整った顔立ち。俺の頭一つ分くらい小さくて、見下ろすたびに怒られる。 それは昔からだけど。 「お前、今年入ってから頻繁にくるなー、果たし状」 「……まあな」 少し高めの声でそう口にするハナは、入学式での出来事を知らない。 「中学の頃はいつもラブレターだったのにな!」 「そう言うのハナは『可愛い』って大人気だったよね」 「お、男に可愛いなんて通用しねーんだよ!もう!」 「……おう」 乙女か。目の前の赤面にそう思っていると、ハナは果たし状を眺めて、俺を見た。 「お前が負けるとは思わねーけど、ま!頑張れ!」 そう言われて、俺は頬が自然と緩む。 踏み込んで来ない、噂は気にもしない。 それは興味がないからなのか、気を遣われているのか、分からないけど、この関係が俺は好きだ。 だからこその、幼なじみ。 ハナの心の声は、いつもまっすぐだ。 『……コイツ、本当かっこいいなー。俺もかっこいいって言われてーなー……』 「……ありがとう、ハナちゃん」 「だ!から…辞めろってば!」 そう言って顔を真っ赤にさせるハナは、相変わらず女にしか見えない。 髪の毛の色が黒で、長ければ完全に少女漫画の主人公だろう。 ハナの髪の毛は、金髪。 キンキラキンの金髪は、ハナにはあまり似合わない。
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