きっかけ

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―――――――――――― そして日は恐ろしい程にあっという間に過ぎ。9月。 まだまだ残暑が厳しい季節。 九州地方での握手会の開催は福岡のみで行われる。 前日にホテルで一泊、当日も一泊して、その翌日に帰る。 運の良いことに3連休が重なってくれた為に非常にゆとりある日程が組めた。 こうして、俺たちが住む長閑な街にcenterが来ることはない為に、田舎に住んでいる人は小旅行感覚で握手会に臨む人も少なくはない。 一見リッチに見える旅行だが、同じクラスの仲の良い友達の奥村の父親が福岡のみホテルの支配人らしく、格安で泊めてくれるとの事でお世話になる予定だ。 そして現在は早朝、坂本と俺で始発の電車を待っていた。 いつもは人が疎らにいるこの駅のホームも、今は俺と坂本、そして少し離れた場所にいる駅員以外の誰もいない。 「明日、いよいよcenterに会えると思うとホント楽しみだよなぁ!」 そう俺の横で坂本は言う。 坂本は高校に入ってからの知り合いなのだが、たまに見せる坂本の天然さが面白くて気がついたら友達になっていた。 そんな彼は細い目をさらに細くしてニッコリと笑う。 そんな坂本はcenterでは山本 淳子、通称淳子と呼ばれるcenterの中のセンター…つまり1番人気な人が推しメンだ。 だがしかし、坂本はそれをなかなか周りには言わない。坂本のcenter好きについて知っているのはせいぜい、俺、深浦、奥村の3人だけであろう。 彼曰く、やはりオタク=恥かしいという固定概念があるらしく、なかなか周りに公表はし難いらしい。 今となれば全国区のアイドルとなって、その概念は薄れたが、一時期前までは確かにそんな風潮もあった事は否めない。
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