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暫く待つと、大きな音を引っさげて電車がやって来た。
それはまるで俺と坂本だけの為に止まってくれたように感じ、特別感を味わうと同時に、宛名のない旅に出るような憧れも兼ね備えていた。
乗り込むと案の定、乗客はほとんど居らず、どことなく電車内の時間自体が遅く感じた。
二人で腰掛けると、坂本の方に目を向ける。
その表情はどこか強張っていた。
「緊張してる?」
俺は意地悪く聞いてみる。
「ままままさか!明日だぞ?」
と言葉とは裏腹に緊張が嫌という程に伝わってきた。
なんて分かりやすいんだ…。
「はははっ。」
俺がついつい笑ってしまうと坂本は横で少し膨れて怒った。
坂本のこういう素直、というか顔や行動に出やすい性格も俺の好きなポイントだ。
嘘をつけないというか…。
「それよりさ…。」
と俺は坂本があまり機嫌を損ねないうちに学校の話題を振った。
電車はガタンガタンと揺れて走馬灯のように、周りの景色が慌ただしく駆け巡っていく。
それはきっと大人へと向かう電車なのだと感じる暇も余裕もきっと俺たちには無いのだ。
青春なんて、きっとそんな物だろう…。
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