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「いらっしゃいませ」
店内に見とれているとカウンターの中にいる男の子から声をかけられた。
立ち止まってしまっているのを不信に思われたくなくて、
その彼へと足を向ける。
さっき見渡した限りでは、このお店に店員さんは彼1人で、佐伯さんの姿もなかった。
黒いカウンターは上部はガラス張りになっていて、
天上のライトが反射しキラキラ輝いている。
カバンから名刺を取りだそうとすると、そのまま席に促されてしまいこれまた白のスツールへと腰を下ろした。
少し高めのスツールに登るのに戸惑ってしまったのを、周りの人が気付いてない事を祈る。
「あ、あの・・・」
「何になさいますか?」
どんなにお洒落で居心地のいい空間だろうと、
周りに人がいるというだけで緊張してしまう。
なので早く用事を済まそうと佐伯さんの名前を出そうとするが、先に注文を促されてしまった。
といってもメニューなんてものは見あたらない。
胸元をはだけさせているとはいえ、
白いシャツに黒いベストのまさにバーテンダーといった彼の後ろには、私には理解出来ない数のお酒が並んでいる。
黒い髪を後ろに流しているからか、端正な顔がまっすぐこっちを見ているのが分かる。
佐伯さんは爽やかでどこか中性的なイケメンという感じだったのに対して、
目の前の彼は掘りがちょっと深めではっきりとした顔立ちの、でも清潔感のあるイケメンだ。
世の中にはこんなにもイケメンがいただろうか。
確かにお客さんでかっこいいと思う人は何人も見たことがある。
田舎では全くなかったが、上京してからはそんなの日常茶飯事で目が肥え始めている気もする。
そんなイケメンな彼に見つめられさらに緊張が増してしまう。
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