入り口

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時計はすでに22時13分を示している。 あまり土地勘のない混雑した駅前。 実は30分前には着いていたのだが、 目的地を中々見つけられずもう何度も同じ場所を彷徨って。 連絡してと言われた番号も何度か携帯に打ち込んではかけられずに締めてしまった。 店を見つけて呼び出してもらえばいいだろう。 そして意を決して、飛び込んだのは忙しそうな交番。 申し訳ない気持ちでいっぱいで名刺を見せて場所を聞く私に、 刑事さんは慌ただしくも地図で説明してくれた。 そこはもう何度と先ほどから通ってる道だった。 そうして漸く見つけた、地下へ降りる階段と壁にかかった看板。 まわりの煌びやかさもあって、なんとも分かりづらい。 見逃してしまっていても仕方がないとさえ思う。 地元の田舎だったら、誰もそこがお店だと気付かずにいつの間にか閉店しているだろうレベルの主張のなさだ。 階段を下りる足がなんだか重い。 心臓が壊れそうな程高鳴っていて、 今にも緊張で吐いてしまいそうだ。 あの後一度家に帰って、少し高めの綺麗な服装に着替えてきた。 淡いピンクのワンピースに黒のカーディガン。 流行とかには興味なくて、好きなものしか着ないタイプなので不安だが自分的にはお気に入りの1つだ。 黒い高めのヒールの靴も、足が疲れるからあまり履かないけれどお気に入りのもの。 ごくり、息を飲み込んで思い切って目の前の扉を開けてみた。 「うわぁー」 黒を基調とした落ち着いた店内。 床も壁もテーブルも一面黒で、それを白い革張りの椅子が調和している。 天上で光1つ1つは小さく淡い光は、満天の星空の様で、テーブルの上だけをしっかりと映し出している。 明るくもないのに、歩くのに不安な暗さでもない。 調度いい光の加減が心地よさを感じる。
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