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◆・◇・◆
《群雨(むらさめ)》
入院した歳上男に囲われながら。
亜里は健康な身体の男を物色する。
亜里の掛け持ちのアルバイト先は、一流企業の社内レストランにも及んでいた。
会社内で悪さは出来ない。
それでも、禁忌を侵す馬鹿はいる。
亜里に興味を示す同じ部署の先輩後輩に、亜里は触手を伸ばしてみた。
先輩の男は独身。
ギラギラした、わかり易い男。
中途半端に煽って、中途半端に触れさせてから、亜里は放置した。
こういう男はキスを交わしただけで、勝手に物を贈ってくる。
粘りつくような口唇の重ね方や液体は、この男の性を物語っていた。
――きっとこの男は、マニアックでしつこい抱き方をする。
「抱かせてよ。なあ……頼むから」
「駄目」
駅構内の片隅。
今にも押し倒しそうな勢いで、男は亜里の口唇を貪る。
必死なその男を躱すことが、亜里の勝利感を至極煽った。
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