第11章 移籍

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「おや? 社長、お話ししてませんでしたか? 麗華常務の発案で、掲載を依頼したんです。ZENN社長の孫なんて、めでたいことなので早く世間に知らせたいし、うちは美形ミュージシャンばかりなので…」 仁は客にも笑いかけながらこう続けた。 「社長が同性愛者なんてデマが流れて…」 記者の方は如才なく、いえいえこんな美人の奥さんがいらっしゃるならねえ、などとマリアに笑いかけてくる。 それでマリアも、仁の胸中を承知で、由真がコスプレだったことなどをにこやかに語ってしまったのだった。  その写真週刊誌が発売になり、問い合わせで事務所がパニックになった頃、マリアはシヴァの家に呼ばれていた。行ってみると、他のメンバーも来ていた。 「マリア、移籍しようかって話が出てる。」 シヴァに目を見据えられ、冷静に言われると、とっさに反論ができなかった。 「お前を苦しめる会社には、もうこれ以上いたくない。役員が好んで社長に問題を起こす会社なんて、会社じゃない。」 「マリア、お前に言うなって泉さんに言われたけど、お前のドームでの衣装、知ってるか? 社長挨拶の時に着るのは麗華さんから指示された、ZENNさんのと色違いの黒のレースのドレスだってさ。」
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