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「お兄ちゃん! お兄ちゃんっ…」
泣きすがる百合子の陰になって、棺の中のZENNの顔が見えない。
「あなたは会社をもらったんだからいいでしょう。全は私が連れていきます! 」
目覚めると、暗い中、隣の由真の寝息が聞こえる。あの光景を夢で見ていたことがわかる。
そういえば、昼間は麗華との対談をしたと思い出す。
ホテルのインペリアル・スイート・ルームを借りて、豪華な調度の中のテーブルに二人が着き、ギルティーの健在ぶりを一緒にファンにアピールするというものだった。
シヴァも麗華と同じ「常務」なのに、呼ばれなかった。
権力はまだ麗華の側にあった。
沈みがちな対談が終わると、やりきれないというふうに麗華は言ってきた。
「マリア、ZENNちゃんを笑いものにできて満足か?」
マリアは言葉もなかった。
「由真ちゃんまで、グルだなんて…」
本当にZENNはどうして自分を後継者に指名したのだろう。自分との関係のせいだけでは決してない。それならば、最後にあんなことが言えるはずがない。
愛してるよ、マリア…
彼が他人に言えなかったこと、誰もがたどりついてはいけない答え。
それは…表現者として行き詰まっていたこと? ビデオ用になるはずだったテープで、マリアは気づく。
しかし、すぐにそれを忘れることにする。
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