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由真はマリアの母達の協力も得て、彼を一人にしないようにしていた。
夜は、苦しみから逃れたがるように、マリアは由真のパジャマの胸にしがみついて眠ろうとする。しかし眠れないらしく、由真が気づけば、真っ暗なリビングに座り込んでいたりする。
永山からの電話はそんな時期だった。
仁がマリアに会いたがっているというのである。
由真はまだマリアには無理だと答えた。
仕事に戻すことよりも、ZENNの遺族に会わせることを恐れたのである。
ZENNの遺体も、位牌も、ひきさらうように連れていった彼の母まで待ち受けていたら…と。
しかし、受話器は背後からマリアに取り上げられた。
マリアはかすかにどもりながら、仁と会う約束をまとめてしまった。
そして、
「由真、車出してくれないか。ちょっと事務所に顔出してくる。」
「え…? 」
「明日いきなり仁さんに会うのは辛いから。」
事務所のビルの前に車を止め、由真が待っていると、ビルから出て来たのは村垣だった。
「マリアさん、急に仁さんと会議が決まりましたので…」
由真は抗議したが、永山も同行し、自宅にも送ると言われれば引き下がるしかなかった。
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