第11章 移籍

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 由真はマリアの母達の協力も得て、彼を一人にしないようにしていた。  夜は、苦しみから逃れたがるように、マリアは由真のパジャマの胸にしがみついて眠ろうとする。しかし眠れないらしく、由真が気づけば、真っ暗なリビングに座り込んでいたりする。    永山からの電話はそんな時期だった。  仁がマリアに会いたがっているというのである。  由真はまだマリアには無理だと答えた。  仕事に戻すことよりも、ZENNの遺族に会わせることを恐れたのである。  ZENNの遺体も、位牌も、ひきさらうように連れていった彼の母まで待ち受けていたら…と。  しかし、受話器は背後からマリアに取り上げられた。 マリアはかすかにどもりながら、仁と会う約束をまとめてしまった。  そして、 「由真、車出してくれないか。ちょっと事務所に顔出してくる。」 「え…? 」 「明日いきなり仁さんに会うのは辛いから。」  事務所のビルの前に車を止め、由真が待っていると、ビルから出て来たのは村垣だった。 「マリアさん、急に仁さんと会議が決まりましたので…」 由真は抗議したが、永山も同行し、自宅にも送ると言われれば引き下がるしかなかった。
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