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夕方帰ってきたマリアは、痛ましいほどの疲れようだった。
が、
「由真、俺、ギルティーの社長になった。ドームのライヴの時、ファンには報告する。」
由真はマリアにすがりついた。
「無理よ、こんな体で…」
しかしマリアは頓着せず、ソファに座ると、何かにとりつかれたように話し始めた。
「ZENNさんに指名された俺がなるのが一番いいんだ。それに、引き受けなければ俺の負けになる。この状態が治るまで…焦らず、時間をかけて俺は前に進もうと決めたんだ。」
負け、って誰に…尋ねるだけ悲しく、由真は言葉をのみ込んだ。
胸にすがりついていただけのマリアが、自分の瞳をのぞき込み、これまでのように胸に強く抱き締めてくれるようになったのはこの頃ではなかったろうか。
優しい口づけ。
パジャマのボタンを外してくれるのはあの繊細な指先だった。
由真はマリアの慰めになればと彼の気の済むようにさせた。
彼のすべてをそのまま受けとめるのは、初めての時から、由真が自分自身に課した義務のはずだった。
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