第11章 移籍

7/15
前へ
/25ページ
次へ
 この数か月のせいで、由真もすっかり体調を崩していた… と思っていたのがどうも違うらしいと気づいたのは、マリアのシングルのレコーディングが終わる頃だった。  作業を終え、夕方に帰ってきたマリアが、ひと眠りから覚めたのを見計らって、由真は嬉しい報告をした。 しかし、マリアの答えは予想さえしていなかったものだった。 「由真、だめだよ。」 「どうして…」 気が遠くなりかけた。 「俺は…ずっと由真と二人きりでやってく、って決めてる。つまり…子供は持たない。」 「どうして…? でも、もう…」 するとマリアはうめくように、 「それは、由真の母さんの言葉を信じられないからだ。」 「えっ…? 」 由真は言葉を失った。 「だから…その…赤ちゃんは、不幸な子かもしれない。生まれて来てはいけな…」 初めて由真はマリアに掴みかかった。悲鳴のように叫んでいた。 「それならどうして私と暮らし続けたのよ! 私と寝たのよ! 」 「由真…」 「無責任よ! 無責任過ぎるわよ! 」 マリアは由真に胸を叩かれるままになっていた。が、由真はマリアから離れると、 「わかったわ。私一人でこの子を生むわ。あんたの手なんか借りないわ! もう、こんな家、出てくわ! 」 「由真…」  「私に触らないで! あなたなんか何をするかわからない人だもの! 」
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加