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この数か月のせいで、由真もすっかり体調を崩していた…
と思っていたのがどうも違うらしいと気づいたのは、マリアのシングルのレコーディングが終わる頃だった。
作業を終え、夕方に帰ってきたマリアが、ひと眠りから覚めたのを見計らって、由真は嬉しい報告をした。
しかし、マリアの答えは予想さえしていなかったものだった。
「由真、だめだよ。」
「どうして…」
気が遠くなりかけた。
「俺は…ずっと由真と二人きりでやってく、って決めてる。つまり…子供は持たない。」
「どうして…? でも、もう…」
するとマリアはうめくように、
「それは、由真の母さんの言葉を信じられないからだ。」
「えっ…? 」
由真は言葉を失った。
「だから…その…赤ちゃんは、不幸な子かもしれない。生まれて来てはいけな…」
初めて由真はマリアに掴みかかった。悲鳴のように叫んでいた。
「それならどうして私と暮らし続けたのよ! 私と寝たのよ! 」
「由真…」
「無責任よ! 無責任過ぎるわよ! 」
マリアは由真に胸を叩かれるままになっていた。が、由真はマリアから離れると、
「わかったわ。私一人でこの子を生むわ。あんたの手なんか借りないわ! もう、こんな家、出てくわ! 」
「由真…」
「私に触らないで! あなたなんか何をするかわからない人だもの! 」
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