第2章

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***** 支払いを済ませて暖簾をくぐると顔にブワッと冷たい風が当たる。 火照った肌にはそれが気持ちよくて、軽い酔い覚ましにはちょうど良かった。 大気の空気をたくさん吸い込むと外と内との気温差で咳き込みそうになり少しだけ息苦しさを感じる。 「はよ帰ろ…。」 白い息吐いてマフラーをギリギリまで首に巻くと俺は帰り道を歩き出した。 テクテクと歩いてくと飲み屋街の通行人の少なさが目につく。 今日が平日であるからかもしれないけどこの不景気も関係あるんだろう。 客足の少ない飲み屋街はとても寂れて見えた。 俺の家はさっきの店から歩いて15分くらいの場所にあり5階建ての賃貸マンションを借りていた。 いつも長山達と街で飲めば奴等をうちに連れ帰るのがお決まりのパターンで、流れ的には今日もそうなると思ってたのに…。 気をつかってくれたらしい。 十年来の友人達の顔を思い出せば苦笑いが出てくる。 どうせ家に帰っても一人反省会をするだけだし、待つ人もいないのだからと思えばちょっとセンチな気分になり、それに合わせて俺の歩く歩行スピードも次第に落ちてきた。 そして、ただたらたらと歩き続けて。 気長にのらりくらりと、時々ジグザグに歩いているうちにいつもは脇を通りすぎるだけの公園のそばまで来ていた。 (ここを突っ切ったほうが早道かな。) 普段は外周の歩道を歩くのだが今日は違う道を歩きたくなって、俺はその広い敷地内に足を踏み入れた。
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