第2章

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「びっ…………っくりさせやがって!! てめぇ、んなとこに座ってんじゃねぇよ!」 まさかこんなとこに人がいるなんて誰が思うだろうか。 驚きのあまり大声を出してしまった自分が今更恥ずかしい。 「ほぇ………」 そいつは俺の声にピクリとするとゆっくりと顔を上げこっちを見返してきた。 最初に目についたのは眠そうな目とその下にある泣きボクロ。 (あ……女の子?) 「…ほぇ……」 (ほえ?) 「……ほェっくしょォンッッ!」 (くしゃみかよ!) 見た目女子に見えたその子は豪快にくしゃみをすると寒そうに身を縮め、そして鼻をずずっとすすると「さむっ」と呟きまた丸くなった。 「な、何やってんの?」 この状況にそう聞かずにいられなくて俺は尋ねてみる。 こんなとこに一人で座ってるなんて怪しいとしか言いようがないのにな……。 「うちに帰れなくて…。」 意外とまともに返ってきた答えに肩透かしを食らって、 「帰れない?あ、終電終わっちまったって事か……。家どこ?」 と再び質問してみたけどそれにはダンマリしか返ってこなかった。 こんな人気のないとこに女の子が一人でいたら危ないと思うんだが、送ってやるほど自分もいい人ではない。 ここは知らない振りしたほうがいいかなと薄情にも立ち去ろうとしたら、 「寒いんです……。」 とその子がボソリと呟いて。 「へ?」 「寒いんです。」 寒いんですと俺に言われても……とチラリと見れば眠そうな目が俺をじっと見ている。 「…………」 「えと……」 「……………」 「………………あの……うち、来る?」 押された沈黙に勝てずについポロッと言ってしまったら、その子はキョトンとした後俺にコクンと頷いて返した。
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