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亜里の手を、男が引き寄せる。
亜里の指の爪から、男はゆっくりと、丁寧に口づけ始めた。
一本、一本。
男は強張った亜里の指に、吐息を搦めて温めていく。
力が抜けていく亜里を、男が大切そうにそっと抱き寄せた。
そして、恐怖以外は何も抱えていない亜里の心へ、男が囁く。
「綺麗だよ。大丈夫、安心して。君はとても魅力的な女性だ」
――そんなはず、ない。
毎日、汚いって言われているのに。
「俺を利用すればいい。少しでも、君が自信を取り戻せるように」
「……じゃあ、抱ける? こんな汚い身体なんて抱けないでしょう!?」
暴力に怯える亜里は、怯えながらも痛みをクリアには感じない。
感覚は、とっくに破壊されていた。
アザだらけの亜里の身体。
それを優しい男の前で晒して見せつけると、亜里は嗤った。
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