第1章

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 それは、遠い遠い昔のこと。遠い遠いとある国に、大変立派な王さまがおりました。  人でも動物でもかまわず家来にする、とても心のやさしい王さまでした。  ある日、王さまは猫の家来を見ておどろきました。 「どうした、猫。右目がないぞ」 猫の家来は、困ったように頷きました。 「ははあ。どうやら、どこかに落としてしまったようです」 「むむむ」  王さまは額に手をやり、汗をぬぐいました。おそるおそる、猫にたずねます。 「痛くはないのか?」 猫はこたえました。 「痛くはありません」 王さまはたずねました。 「不便ではないのか?」    猫はちょっと考えました。 「少しばかり不便です」  王さまは、このことに心を痛めて、猫に命令をくだしました。 「よろしい。それでは、家来を三人連れて、右目を探しにいきなさい」
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