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一行は、もう一度西の森へと向かった。
「嘘つきのネズミはどこ? 嘘つきのネズミはどこ?」
鳥がさえずると、さっきのネズミが出てきて怒鳴った。
「誰だい、ひとを嘘つき呼ばわりする奴は!」
「東の谷の竜だ」人間が言った。
「やれやれ、あんなヤツの言うことをうのみにするなんて! まったく、そろいもそろって、その頭は何のためについてるんだ!」
「きいきいと、うるさいネズミめ!」
鳥がネズミをくちばしでつついた。
「痛い痛い! じゃあ調べてみろ! この森にはそいつの目玉なんてない!」
そこで、一行は森に入った。
ネズミはその様子をじっと見ていたが、やがて細長い尻尾を揺らして、猫に近づいた。
「やぁ、猫。目玉をなくしたのは、お前かい?」
「はい、そうなんです」
「そうかい、それじゃあ大変だろう。片目だけっていうのは、中途半端でね。もうひとつの目玉もいらなくはないかい?」
言うやいなや、ネズミは猫に飛びかかった。
フーッとうなり、猫は応戦する。
ネズミは木の上にのぼったり、おりたり、枝を走り回ったり。
猫も負けじとその後を追う。
やがて、猫が木の根につまずいた。
その時、ぽろりと何かが猫の口から出た。
ネズミがさっと、それを拾い上げる。
「何だ、これは?」
それこそ、探していた猫の右目だった。
離れて様子を見ていた人間と犬と鳥は、喜んだ。
「何てことだ! 今のはすべて、右目を取り戻すためにやってくれていたことだったのか!」人間がネズミを抱きしめた。
「さぁ、城へ行こう! 家族も連れてくるといい!」そう言って、犬はネズミをくわえた。
こうして、猫は右目を取り戻した。
「ところで、どうして猫が目を飲みこんだって知ってたんだい?」
鳥の言葉に、ネズミは答えた。
「何、ちょいと自分の中に、ためこんでやしないかと思ったのさ」
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