第1章

4/5
前へ
/5ページ
次へ
 一行は、もう一度西の森へと向かった。  「嘘つきのネズミはどこ? 嘘つきのネズミはどこ?」  鳥がさえずると、さっきのネズミが出てきて怒鳴った。  「誰だい、ひとを嘘つき呼ばわりする奴は!」    「東の谷の竜だ」人間が言った。  「やれやれ、あんなヤツの言うことをうのみにするなんて! まったく、そろいもそろって、その頭は何のためについてるんだ!」  「きいきいと、うるさいネズミめ!」  鳥がネズミをくちばしでつついた。  「痛い痛い! じゃあ調べてみろ! この森にはそいつの目玉なんてない!」  そこで、一行は森に入った。  ネズミはその様子をじっと見ていたが、やがて細長い尻尾を揺らして、猫に近づいた。  「やぁ、猫。目玉をなくしたのは、お前かい?」  「はい、そうなんです」  「そうかい、それじゃあ大変だろう。片目だけっていうのは、中途半端でね。もうひとつの目玉もいらなくはないかい?」  言うやいなや、ネズミは猫に飛びかかった。  フーッとうなり、猫は応戦する。  ネズミは木の上にのぼったり、おりたり、枝を走り回ったり。    猫も負けじとその後を追う。    やがて、猫が木の根につまずいた。  その時、ぽろりと何かが猫の口から出た。  ネズミがさっと、それを拾い上げる。  「何だ、これは?」  それこそ、探していた猫の右目だった。  離れて様子を見ていた人間と犬と鳥は、喜んだ。  「何てことだ! 今のはすべて、右目を取り戻すためにやってくれていたことだったのか!」人間がネズミを抱きしめた。  「さぁ、城へ行こう! 家族も連れてくるといい!」そう言って、犬はネズミをくわえた。  こうして、猫は右目を取り戻した。  「ところで、どうして猫が目を飲みこんだって知ってたんだい?」  鳥の言葉に、ネズミは答えた。  「何、ちょいと自分の中に、ためこんでやしないかと思ったのさ」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加