ゴキブリ

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 無様に床に転がった僕を見て、どっ、と教室中がわいた。  何人かが僕の給食を覗き込み、プッと吹きだしたりゲラゲラ笑ったりしている。 「だ……だれが入れたの……?」  僕は涙声になった。  みんなは僕を無視して、笑いながら意味ありげな視線を交わし合う。 「おいおいゴキブリくん。  給食は残さず食べなきゃダメだぜ?」  愛護くんが茶化して言った。 『ゴキブリくん』というのは僕のあだ名だ。 「わ~、共食いだぁ~」 と囃(はや)し立てる女子たちに愛護くんは肩をすくめる。 「知らねぇの?  ゴキブリって共食いするんだぜ?」
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