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味噌汁の容器を口もとに近づける。
汁が染み込んでペタンと垂れた触角。
グッタリした死骸。
頭部の形状や前脚の小さな突起まで見える距離。
僕はこれを……食べないと……。
顔中から嫌な汗が噴き出す。
意を決して、口を大きく開く。
周りから悲鳴混じりの歓声があがる。
次の瞬間、横から出てきた手が器を払いのけた。
中身をぶち撒けて床に転がる容器。
味噌汁を叩き落としたのは、転入生の少女――西園寺姫乃さんだった。
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