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唇を切ったのか、口の端から赤い雫が垂れている。
大きく見開いた両眼には何の意思も感じられない。
数本の前髪が眼球に張りついている。
「あの……どうされました……？」
新見先生が不安に駆られて尋ねる。
体育教師は長いゲップをした。
むせ返るような錆びた鉄のにおい。
プツッ、と何かが破れる音がした。
体育教師の右の頬に黒いものが見えた。
小さな黒い虫……1センチくらいのゴキブリが顔の上を這う。
皮膚の下から這い出してきた……？
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