籠城

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 彼女は裂けたブラウスの前部分をガムテープで無理やり繋いでいた。  ……あまり隠せてないけど。  とっさに目を逸らした僕の喉元に、鋭い刃が突きつけられた。 「ひっ……!?」  調理室から持ち出されたと思われる肉切り包丁。  それをプラスチック製の1メートル定規の先端にガムテープで装着している。  転入生はそれを槍のごとく構える。  刃先は赤く濡れている。  ……使用済みなのだ。  見れば彼女の両腕にはそれぞれノートが巻かれ、その上からやはりガムテープでぐるぐる巻きに。  腕を噛まれるのに備えた防具だ。
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