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八時五十分になり白衣に着替えた龍二がドアを開けると、既に患者が一人待っていた。
「おはようございます。今日も早いですね」
「おはよう。毎日暑いからね、外に出る用事は早めに終わらせたいのよ。あら、新人さん?」
六十代後半くらいだろうか。
受付にいる光輝を見るなり、派手な柄物のシャツを着た小太りな女性は目を輝かせた。
「はじめまして。息子の光輝です」
「まあ、あなたが噂の息子さん? イケメン君じゃない。柔道をやってるなんて信じられないわ」
彼女が光輝に手渡した黄色い診察券には、山崎静子(やまざき しずこ)と書かれている。カルテナンバーは一桁。
どうやら開業当初からの患者らしい。
「光輝くんは、どこの高校に通ってるの?」
「都内にある、名蔵(なぐら)高校です」
「名蔵って言ったら、進学校じゃない。文武両道なんてすごいわ!」
静子は興奮したようにそう言うと、光輝と龍二を見比べてから、再び口を開いた。
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