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翌朝。
光輝は窓から射し込む美しい朝日……ではなく、河野の喧しい鼾(いびき)で目が覚めた。
彼のいるベッドは入口から見て左側の窓際、対する河野は右側の窓際だ。
そのため、二人の間は数メートルしか離れていない。
絶えず鼓膜を揺らす轟音。
この男は眠っていようが、起きていようがうるさいのだから、本当に質(たち)が悪い。
光輝はあくびを噛み殺し、まだ眠い目を擦りながら窓の外へ視線を移した。
──雨か。
昨日の予報は見事に的中し、大粒の雨が窓を濡らしていた。
カラッと晴れていれば多少は明るい気分にもなれるのだが、こんな天気では益々落ち込んでしまう。
「ゴォォォ! ガガッ!」
何という鼾だ。
河野は今ので目覚めたらしく、肉食獣のような雄叫びをあげながら背伸びをした。
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